〜〜反応拡散系の観点から〜〜
最終更新日: 2009年3月26日
本講義は東北大学国際高等研究教育院 先端基礎科学領域基盤 の指定授業科目です.
◎授業の目的と概要: 「生命現象の数理」の第2部として,反応拡散系によるパターン形成に関する数学的理論を紹介する. Turingによって発見された「拡散誘導不安定化」に基づくパターン形成の数理モデルは,生命現象を理解するうえで大きな役割を果たしている. 本講義では,まず,反応拡散方程式系に対する初期--境界値問題の解の存在や有界性などの必要な数学的枠組みを学び,次いで,定常解の構成法 とその安定性について学ぶ.さらに,進行波解の構成法を学ぶ.また,より複雑な反応拡散方程式についての近年の研究成果を紹介する. ◎学習の到達目標: *非線型放物型偏微分方程式の解の構成方法とその定性的性質の研究方法の基礎について理解する. *GiererとMeinhardtによる活性因子−抑制因子系,Allen-Cahn方程式,FitzHugh-Nagumo方程式など,典型的な反応拡散系の解の基本的性質を理解する. ◎授業の内容・方法と進度予定: 1.反応拡散方程式系に対する初期−境界値問題の解の存在(4回) 正則半群と作用素の分数冪,積分方程式への変換,解の有界性と長時間挙動 2.定常解―Gierer-Meinhardt系を中心に(5回) 分岐解と安定性,特異摂動法,非線型性とパターンの種類 3.進行波解(4回) Allen-Cahn 方程式,FitzHugh-Nagumo方程式の一次元進行波解の構成,その安定性 4.より複雑な反応拡散系によるパターン形成(2回) KellerとSegelの走化性モデル,三成分系 ◎教科書および参考書: 教科書は用いない.参考書として,以下のものを挙げておく.他にも良書は多い.講義中随時紹介する. [1] 増田久弥,「非線型数学」,朝倉書店 [2] 三村昌泰編,「パターン形成とダイナミクス」,東京大学出版会,2006. [3] James D. Murray, "Mathematical Biology I. An Introduction", "Mathematical Biology II: Spatial Models and Biomedical Applications", Third Edition, Springer, 2002, 2003. [4] Joel Smoller, "Shock Waves and Reaction-Diffusion Equations", Second Edition, Springer-Verlag, 1994. [5] 柳田英二編,「爆発と凝集」,東京大学出版会,2006. [6] Eberhard Zeidler, "Applied Functional Analysis", Springer 1995. ◎成績評価の方法: 課題に対するレポートの成績により評価する. ◎その他: 講義終了後,質問の時間を設ける.